お久しぶりです。
グランプリ神戸から早いものでもう一週間が経とうとしています。

大型連休を控え、皆さんもMtGに限らず色々な予定がおありと思いますが、
僕も明日から数日間北の大地へ旅に出ます。


その前に。
熱に浮かされた様に駆け抜けた試合の「記憶」が「記録」になる前に。
ここ数日間眠れなかった程の悔しさが、オブラートに包まれて苦い思い出になる前に。

GP神戸SEの結果を踏まえ、自分が使ったデッキについて
知っている事、思う事を全て書き残しておきたいと考えました。



あくまで僕個人の所感も大いに混ざったものですが、興味のある方は
最後までお付き合い頂ければ幸甚です。






Grand Prix Kobe Side Event Legacy 8th
Player : Ryosuke Sakamoto
Deck Designer : Ryosuke Suck-a-motto
Deck : BGW Tempo a.k.a. Dark Horizons

Deck List

Creatures 12
4《闇の腹心/Dark Confidant》
4《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
4《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》

Instants and Sorceries 16
4《思考囲い/Thoughtseize》
1《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》
4《Hymn to Tourach》
3《名誉回復/Vindicate》
4《剣を鍬に/Swords to Plowshares》

Artifacts 6
3《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》
3《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》

Enchantments 2
2《破滅的な行為/Pernicious Deed》

Plainswalkers 1
1《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》

Lands 23
4《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》
4《湿地の干潟/Marsh Flats》
2《Bayou》
3《Scrubland》
4《不毛の大地/Wasteland》
1《Karakas》
1《Maze of Ith》
1《地平線の梢/Horizon Canopy》
1《森/Forest》
1《平地/Plains》
1《沼/Swamp》

Side
4《仕組まれた疫病/Engineered Plague》
3《根絶/Extirpate》
1《ボジューカの沼/Bojuka Bog》
2《クローサの掌握/Krosan Grip》
2《流刑への道/Path to Exile》
2《強迫/Duress》
1《非業の死/Perish》

GP神戸SEで僕が使用したデッキは上記の物です。


1.メインボードの構成

12枚のクリーチャーについて特にいう事はありません。
これらは間違いなくレガシーに於いて「最強」の生物達です。
相手を選ばず、何物にも依存せず、そして(だからこそ)強い。

この3種に比肩するパワーカードと言えば、
《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》
《野生のナカティル/Wild Nacatl》
ぐらいしか思いつきません。


次にスペルを見ていきますが、その前にDark Horizonsの設計思想についての説明が必要です。


従来、BGWいわゆる「ドランカラー」「rockカラー」デッキは、
①部族やビートダウンに強い
②コンボや封殺タイプのデッキに弱い
③何にでも万遍なく戦える=ローグ耐性が高い
という特徴を持っていました。

これは一般論化していますが、更に具体的に言うならば、
①ビートダウンへの強み
 StP, Thoughtseizeという軽量の1-1交換カードが8枚
 Deedという「Clean Up」を抱えている
 という2点に尽きます。

②コンボやロック・デッキへの脆弱性
 上記のとおり、The Rockの強さは「ボード支配」に特化しています。
 従い、一切ボードを利用しないStorm系コンボは最悪の相手です。
 また、たっぷり時間をかけて1-1交換を繰り返してからのClean Upという
 基本戦略上、そもそも呪文をプレイさせないSTAXや全て打ち消すCTGは非常に
 戦い辛い相手でした。

③ローグへの耐性
 アポカリプスが生んだ2強ことVindicateとDeedのペアが輝きます。
 キーカードに頼ったシステム構築を主眼に据えたローグには前者。
 面展開による場の構築を主眼に据えたローグは後者で捌きます。

といったところです。

しかしながら、昨今のコンボ・デッキの増加を受け、BGWは②項の脆弱性を解決する必要性に迫られました。

そこで採用されたのが《Hymn to Tourach》です。

相手のハンド・リソースを問答無用で削り取るこのカードは、綿密なプランを必要とするコンボ・デッキにとっては悪夢でしかありません。
そして同時に、早い段階でプレイする事で、強制マリガン状態に陥れる事が可能になるという意味では、Dredgeを除いて万遍なく使えるパワーカードです。

しかし、良い事ばかりではありません。
BBというマナコストの為に、極力基本土地をフェッチしたい序盤からDualsを使わざるを得ず、それによって《不毛の大地/Wasteland》を使う部族相手の相性が一気に悪化してしまいました。
そうなると、後続の呪文がプレイ出来ない上に、起死回生のDeedが間に合わないという致命的な状態に陥ってしまいます。

それらを解決する為に、搭載されたのが《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》なのです。

かつてSCGでMox-D入りのBGWが出たとき、多くの人は言いました。
「そこまでして1TにHymnが撃ちたいか」
「先手1Tボブってそんなに強いのか」

いずれも答えは「No...でも結果としてそうなるね。」なのです。

不毛されない5色ランド。
そこで失ったアドバンテージは、Hymnが相殺してくれます。
相手には「プラン崩壊」という恐るべきプレゼントを、
そしてこちらには「強固な色マナ基盤」という大きすぎるオマケをつけて。



随分と横道にそれましたが、メイン・デッキの説明に戻ります。


《思考囲い/Thoughtseize》
《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
ここは固定枠です。
特に説明は不要でしょう。

《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》
《名誉回復/Vindicate》
初手に2枚要らない《名誉回復/Vindicate》を1枚減らして、Mox,Thoughtseizeと合わせて「スターター」となる8枚目のカードを投入しました。
早期のハンデスはほぼVindicateと同等の役割を果たしますし、
マリガン基準を少しでも緩和するというのはNon-Brainstorm Deckにとって極めて重要な事であると考えます。


《破滅的な行為/Pernicious Deed》
Mox-Dとの相性について疑問に思われる方が非常に多いです。
確かにMox-Dは流れてしまうでしょう。
それがどうかしましたか?
そのころには土地も十分に並んでおり、《血染めの月/Blood Moon》や《基本に帰れ/Back to Basics》等のこちらを悩ませるカードもDeedで一緒に流れてしまうというのに。

Deedは盤面を「ひっくり返す」カードです。
そして、「こちらだけが知る大量破壊」です。
苦しげな顔をして引き付けて…引き付けて一気に流す。
あるいは、盤面に叩き付けて悠々と相手を恐喝し、ツモ切りを躊躇った相手のハンドをHymnでかっさらうのが基本的な運用です。


《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》
これの採用には個人差がありますし、僕自身確定枠とは思いません。

しかしながら、「無尽蔵なアドバンテージエンジン」であり、
「膠着した盤面を打開するカード」であり、
「Deedの破壊力を最大限に引き上げる為の最高の囮」
であるこのカードは、自分のプレイスタイルには非常に合致する1枚だと考えます。
事実、これで膠着を破って勝った試合も、これを倒す為に躍起になった相手をDeedで壊滅させた試合も、Kill Turnを早めて逃げ切った試合も多々ありました。


《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》

そして最後に、このデッキの「最重要カード」の登場です。

BGWデッキはアドバンテージを取る手段が豊富ですが、その内容までは保証していません。
優位な場を築いたのに、土地ばかり抱えて沈んでいく…そんな負け方をしたBGWは星の数程いるでしょう。

繰り返しになりますが、Non-Brainstorm Deckは、無駄ヅモをしてしまうと取り返しがつきません。
それはすなわちアドバンテージロスと心得るべきです。

その為にも序盤から独楽をガンガン回し、必要な物だけを引き続けることが重要です。



土地について

基本的な所から動いてはいません。
1Tに一番必要なのは《沼/Swamp》一卓。
しかし2枚目の沼はHymn専用カードなので却下し、展開しつつ安全に4マナまでたどり着くための基本土地を3種3枚。

KarakasはSnTの1本目を取るために「入れている事」が必須。
ジョーカーを持たずに勝負するのは趣味じゃないです。

Horizon Canopyも1枚入れている事が大事。
マナフラ気味でも、騎士から1回起動するだけで一気に締まります。

IthはSFMへの自分なりの回答として。
Deedを最大限に活用する為にはいい働きを見せますが、やはりマナが出ないのは辛いというのが使ってみての感想でした。




2.サイドボードの選択

今回のサイドボードには、ある程度必要なものを全て詰め込んだつもりですので、
概論を語るよりも逐条解説をしていった方が早いでしょう。


4《仕組まれた疫病/Engineered Plague》

またもやこのデッキの設計思想の話に戻ってしまい恐縮なのですが、
本来Kitchen FinksやWitness、3枚目のDeedが入っていた場所にHymnを投入した事で、「手数で押すデッキ」への相性は大きく悪化しています。
それを解消するために、疫病は必須のカードです。

そんな概論的な説明は別としても、
・Goblins…徹底的に守って疫病を複数貼るしか勝ち目がない
・Merfrok…ロードを捌くのに全力を使うので、SilvergillやCatcher相手に1-1交換している暇はない。
・Mother of Runes系デッキ…Deedの追加として。
というように、何だかんだで必要な相手が多い1枚です。


2《流刑への道/Path to Exile》

疫病で対処出来ないCoralhelmやGoblin Chieftainに対して、あるいは対クロックパーミ戦でFoWされるStPの補填として。
GSZ登場後のZoo戦は「殺さないといけない騎士の量」が増えていますので、こちらも軽量単発除去を増やすほかありません。


3 《根絶/Extirpate》

このデッキにおける最強のDredge対策であり、Control killerの1枚です。
一度採用数を減らしましたが、後悔以外何も得るものがありませんでした。
IGGYルートで動いたANTを打ち取るのにも役立ちます。

CryptやRelicはイマイチ、Nihil Spellbombはそこそこありな墓地対策ですが
Dredge戦で橋を抜き、疫病指定ホラー&イリュージョンで勝つ為にはこれでないとダメ、と考えています。

NPHではピッチ版も登場しますが、個人的に選ぶならまずこちらです。
1マナ浮かせずに動けるという利点よりも、対コントロールで輝く刹那の方が重要でしょう。
相手のハンドにFoWセットとStPがある場合、相手は恐らくこちらの生物に後者で対処しようとするでしょう。
そうすればしめたもの。「どうぞ」とこちらのボブを通した相手の舌の根が乾かぬうちに、墓地にあるStPを根絶するというのは、刹那だから出来る基本テクニックです。

蛇足ですが、数は減りましたが依然複数いるCTGや、Punishing Fire相手にも便利です。



2 《強迫/Duress》

対コンボ戦の追加のハンデスです。
加えて、大振りな行動はDazeの餌にされてしまうクロックパーミ戦でも追加投入します。
Burn相手にThoughtseizeと差し替えられるのもメリットです。


1 《非業の死/Perish》

ここは最後まで悩んだ1枚です。
他の候補は3枚目の《破滅的な行為/Pernicious Deed》、2枚目の《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》、そして《美徳の喪失/Virtue’s Ruin》に《梅澤の十手/Umezawa’s Jitte》といったところ。

最終的に、
Deed⇒NeedleやRevokerのリスクを考慮し、2枚から増やすべきではない。
Elspeth⇒対CTG戦が極端に減った今、4dropの重要性は低い。
Viture⇒おそらくEPが同じ仕事をしてくれる。
Jitte⇒装備先になる生物の数が十分ではない為、安定しない。
という考えから、Vengevine系デッキやBant、Elves戦で必要になる速度とカードパワーを十分に有しているとの判断でPerishになりました。

いずれも、こちらの損失は無視してでも撃たざるを得ない相手ばかりです。


1 《ボジューカの沼/Bojuka Bog》

KotRが溢れる環境で入れない選択肢はありません。
以前はメインに入っていたものの、Caw-Goの為にどうしてもMaze of Ithを入れざるを得なくなり、どちらかをサイドに落とすならばメインIth,サイドBojukaだという判断をしました。
普通の墓地対策としてもきわめて優秀で、特にDredge戦では素引きしてしまってもCabal Therapyの対象にならないのが評価すべきポイントです。


2 《クローサの掌握/Krosan Grip》

本当に必要かどうか、これも議論した1枚です。
選択理由の一つであるCTGがなりを潜めた今、早期にVialや装備品に打ち込める《自然の要求/Nature’s Claim》の方が良いのではないか、またはほかのカードを入れるべきではないかと検討しました。

ここは本当に難しい1枚です。
勇気があるなら抜いてしまっても良いでしょう。

最終的に、独楽対決に帰する同系戦と、一定の愛好者がいるCounterTop/Landstill系統のデッキ、そして自分自身使おうかと考えていた《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》への確実な回答として採用しました。





3.今後の展望

NPHは恐らく、一時的なものに終わることを望んではいますが、レガシー環境に大きな影響を齎すでしょう。
それはNacatlやQPM, KotRを生んだアラーラ・ブロックや、JaceやSFMを生んだWorldwakeの比ではありません。

色を問わない1マナカウンターというものは、Legacyの根幹をなすパラダイムそのものを動かしかねないもの=《不毛の大地/Wasteland》クラスの潜在力を秘めたものと言えるでしょう。

はたしてその中でLegacyが、そしてこのDHがどう動くのか。
今の僕では全く見当もつきません。



もしかすると、日本選手権では、全てさっぱり忘れたように別のデッキを使っている僕がいるかもしれません。



それはきっと、悪い事ではないでしょう。


一度はThe Rockに絶望し、Team America, New Horizons, Landstill, Survival, PT Junk…と彷徨い続けた1年間。

その答えをBrad Nelsonのデッキに見つけ、初運転で草の根優勝してから快進撃を続けてきたこのDark Horizons。

これもまた、どこかへ辿り着く長い長い旅の途中の通過点に過ぎないのだから。

コメント

ふゆきん
2011年4月29日23:09

>ひ
それを書かなかったら滅茶苦茶ええ記事やったのにwwwww

スライ信者
2011年4月29日23:19

僕も緑白黒ジャンクを作っていて行き詰まっていたので参考になりました。

大昔から器用貧乏色と揶揄され続けていたこのカラーの1つの可能性としてDHが誕生した意味は大きいですね。

たま
2011年4月30日4:07

りょーさん文章うまいすなぁw
独楽に関しての考察が面白かったです。

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