僕自身はStandardプレイヤーでは無いが、昨今Standardを取り巻いている環境ぐらいは聞きかじっているつもりだ。
先日の日本選手権でBest4に赤単が2名と、明確なBeatdown華々しい結果を残した事は中々面白い。
しかしそれは一旦置いといて、非常に興味深いデッキがある。
それがキブラー・バントだ。
ご存知の通りキブラー・バントは《復讐蔦/Vengevine》による「ジェイス殺し」を搭載したJace-Deckな訳なんだが、その派手なエンジンに目を取られて地味な役回りに徹してはいるが、このデッキの骨子となるのが
・《海門の神官/Sea-Gate Oracle》
という《手練/Sleight of Hand》持ちの1/3である。
さて、こいつの何が面白いって、その役回りの二極性。
対ビートダウンでは相手の生物を止めつつ除去を探す「ビジネス・スペル」であり
対コントロールでは《貴族の教主/Noble Hierarch》の賛美を受けてクロックを刻む優秀な小型クリーチャーの役割を果たす。
実際に回してみると、こいつのプレイを境界線として、自分の役回りを
・Beatdown
・Control
に自由にスイッチ出来る事に気付いた。
さて、前置きが長くなったが、何故キブラー・バントの話を持ち出したのかというと、今のレガシー環境は「Who’s the Beatdown?」について非常に考えさせられる環境になっているからだ。
1.王者,New Horizons
今の環境を語る上で欠かせないのが、横浜でくーやんが優勝をかっさらって日本でも一躍メジャーになった「New Horizons」である。
このデッキは、上記のキブラー・バントと非常に性格が似ている。
まず、《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》。こいつがスイッチ役であり、この生物がとる行動は大きく分けて以下の通り。
①殴る
②フェッチ能力で自らのサイズアップを図る
③《不毛の大地/Wasteland》連打
④余った土地を《地平線の梢/Horizon Canopy》経由で手札に変換
まず①は、まさに「Beatdown」行動なんだけど、他はどうか。
②…相手の生物が越えられないのでサイズアップを図る=Control行動
③…低速コントロールの足どめを行う=Beatdown行動(重要)
②は言わずもがなとして、重要なのは③。
一見Control行動に見えるけども、自分よりControl能力の高いデッキ(大抵大量のマナや多種色マナを要する)デッキ相手の行動を抑え込むという意味で、これは非常に「Beatdown行動」といえる。
《ジェイス》や《謙虚》、《Moat》といった馬鹿げたControlカードに対して、自らのBeatdown戦略の正当性を訴える行動である。
そして最後に、④。これが《騎士》というかNHというデッキの凄いトコだと思う。
前述の通り、場をControlするためにはある程度のマナが必要になる。
では、次に場を掌握した後にBeatdownへと移行する為には手数が必要となる。
個人的に「コントロールデッキ」にとって最も難しい「Control⇒Beatdownへのシフト」という行動をたった1枚で実にスムーズに行うことができるのだ。
どんなコントロール・デッキでも相手を殺す瞬間は「Beatdown」サイドに回ることになる。
その瞬間を見極めるのは、非常に難しい。
それをやや強引に、しかしたった1枚で実現する《騎士》はNHの強さの真髄である。
2.《ジェイス》は何故強いのか
さて、ここで突然話が飛んであのイカれたPW,《精神を刻む者ジェイス》に触れてみたい。
彼の強さに対するイメージは、結構コロコロと変わっていった。
まず最初に抱いたのは
「ドロー、バウンス、トップ操作による疑似カウンター…青いコントロールがすべきこと、したいことをすべて1枚で実行できる」
という感想。
次に抱いたのは
「相殺と同じで、自分の身を自分で守れる強力なコントロールカード」
そして今、彼の強さの理由を身にしみて感じる。
さっき書いた「試合中のWho’s Beatdownの移行」に当てはめて考えてほしい。
そう、彼は勝利の瞬間までプレイヤーが「Control」サイドに立ち続けることを可能にした1枚なのである。
鉄壁のLandstillであっても最後は《工廠》が殴りかかっていくため、StPを食らったりすると地味に(ボディブローのように)痛い。
城塞の如きエンチャントレスの群れが完成し、あとは《戦争の言葉/Words of War》で殺すBeatdownの時間が…相手の場には《ルーンの光輪/Runed Halo》が。
ほとんどのコントロール・デッキは最後の一瞬、Beatdownerになる瞬間を守りぬくための下準備をどれだけ怠らずに迎えられるか、寧ろその状況になって漸くBeatdownerへと転向するのだけれど、《ジェイス》は違う。
たった一言、「マイナス12」と呟くだけで本来すべてのデッキに必要であった「Beatdown」という行動が完了してしまうのだ。
あとは飛んでくる《もみ消し/Stifle》を《対抗呪文/Counterspell》したり《相殺/Counterbalance》すればいい。
ジェイスの恐ろしさはControl能力だけでなく、Control Deckが最も隙を見せるハズの「Beatdown時間」が一連のスタックの上で完了してしまう事にある。
3.コンボ・デッキはBeatdown?
せっかくWho’s Beatdownの話題に触れたので、自分のコンボに対する認識も書いておきたい。
先日《神秘の教示者/Mystical Tutor》が環境から追放勧告を受け、弱体化したと言われるANT。
従来のまま代用品を探すようでは単なる弱体化かもしれないが、どうやらこれも「Who’s…」の世界のようである。
コンボにとってのBeatdown行動とは
・マナ加速
・ストーム稼ぎ
・エンドスペルのキャスト
である。
逆にControl行動はというと
・ハンデス
・その他妨害
(ガドック、法学者などのHate-Bearsに《死の印/Deathmark》を打ち込む、
CotVやTrinisphereに《ハーキルの召還術/Hurkyl’s Recall》を打つetc)
もうお分かりだとは思うが、言うまでもなく《神秘の教示者/Mystical Tutor》はキブラーにとっての《神官》,NHにとっての《騎士》、つまり「BeatとControlを選択するスイッチ」として最高のカードであった。
これが失われたことにより、スイッチ役は《燃え立つ願い/Burning Wish》に変更された。(従前からあったが)
しかし、どれほどの人が《燃え立つ願い/Burning Wish》の主な用途を「サイドから《紅蓮地獄/Pyroclasm》を持ってくるカード」だと思っているだろうか。
もちろん、殆どの答えは「LEDや大量のマナと合わせてフィニッシュする為のカード」である。
M-TutorからBurning Wishへの変更。
これは「徹底的に妨害して、満を持してAd Nauseamをプレイ」という従来のControl-Comboから、「チェイン・コンボの途中で相手の妨害を排する」という「Beatdown-Combo」への過渡を意味しているのではないかと思う。
4.最後に
最後だし、おまけ程度に久々にThe Rockというデッキの話。
このデッキはもとより非常にBeat/Controlのスイッチがしやすいデッキだった。
《思考囲い/Thoughtseize》でStPを落とすBeat行動、《土を食うもの/Terravore》を落とすControl行動。
《名誉回復/Vindicate》で土地を割るBeat行動、生物を除去するControl行動。
逆にいえば、自分が今どちらに立っているかを冷静に見つめなけれうっかり負けてしまう事があるという事。
Deedの絡むゲームなら、リセット前をControl、後をBeatdownと簡単に位置づけられるのだけど、単体除去やハンデスを多めに絡めた乱戦の中では自分の立ち位置が本当に難しい。
相手はGoblinだ。自分はThe Rockだ。徹底的にControlし切ってやる!
本当にそうか?
Ringleaderでハンドを稼ぐという行動は非常にControl的な行動だ。
ならば、相手が4マナという大きなマナを使ってドローを稼ぐターンの間、自分はBeaterになるべきだ。
(瓶?あれはControl行動をBeatの速度・軽さで出来るから壊れてる。)
相手はANTだ。自分はLandstillだ。全部カウンターしてやる!
これも疑うべき。
少なくとも序盤は相手は「必要牌を集める」「Duressを打つ」というControlサイドに立っている。
だから、僕は対コンボのサイドとしてControlカードである《Spell Pierce》よりもBeatカードである《Meddling Mage》を選ぶ。
はっきり言って、思ったことをひたすら書きなぐっただけなのですが、
自戒の意味も込めて今こそ「Who is The Beatdown」を徹底的に意識する必要があるように思います。
ビート・コントロールやクロックパーミといった、自分の立ち位置が非常に難しいデッキが横行している昨今。
これを常に意識して戦えるプレイヤーになりたいものです。
コメント
僕も《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》が4枚投入のZooを調整していて未だに土地の配分で悩んでいますW
ジェイス殺すならお勧めは《ナントゥーコの僧院/Nantuko Monastery》
>へぎーさん
Coolを気取ってみました。
熱いのが御希望ならばおおせのままに。
>岸田さん
ジェイス「ブレストで爆薬探します」
それは2割冗談、8割本気として、白力戦は中々強かったです。
爆薬X=4するとジェイスも死んでしまうので。
>ケミやん
選択肢の多いカードとコスパのイカれたカードはいつだってただつよ。
騎士とジェイスはその両方を兼ね備えてるのがなー…
>King MMF
kingに褒められるとくすぐったいのですよ。
そういえばこの記事のリンク元にmixiのツイートが多い。
怒らないから貼った人出てきなさい。