そう言えば一度書くとか言っておきながら書かずに新環境を迎えそうなので。



1.BW Mysticというデッキの概要

今でこそDeadguy Aleという名称が一般化していますが、かつては"BW Confidant"とも呼ばれていたこのアーキタイプ。

その後Lingering SoulsとSfMを基盤とした「命の価値5セントぐらいの連中にかわるがわる剣を握らせて突っ込ませるデックウィン」になってからは"BW Mystic"

更にHymn&Lilianaによるリソース強奪戦略を主軸に置いたものは"BW Discard"という名称でよばれたりもしていました。


名前にかかわらずこのデッキの目指すところは大体同じで
・手札破壊で相手のブン回りや堅牢な防御を切り崩す
・アドバンテージを取れる生物で優位を築きつつライフを削る
という2点に尽きます。



2.使用されるカード

①攻撃要員

《闇の腹心/Dark Confidant》
Deadguyが誕生してから、ずっとそれを支えてきた大黒柱。
手札破壊でこいつを着地させ、また更なる(小さな)脅威を積み重ねていくのが基本。

《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》
落ち目だったDeadguyの救世主。
BWカラーの泣き所はサイズの小ささでしたが、打点を一気に水増し出来る上に相手のBig Greenを完封するSoFaFのお蔭で、何とか生物同士の殴り合いに耐えるようになりました。

《苦花/Bitterblossom》
安い命量産機。
「待機開けた奴から順番に十手持って殴ってこい。殴り終わったら待機中の奴にパスしてターン終了」という状態になればほとんどの場合勝ったも同然。

《未練ある魂/Lingering Souls》
安い命量産機Mk-Ⅱ
Blossomと違い、中盤に引いても即座に展開可能なのが良い所。
相手のタルモゴイフのサイズを徒にあげる事もない。

《墓忍び/Tombstalker》
ボブとの相性は悪いが、他の少ない打点を補う為に採用される事が多い。
より多角的に攻めたい人向け。

《スレイベンの守護者、サリア》
期待のホープか、自分にも被害を与えるnot playableなカードか、ナイスサイドなのか。中々評価が難しいお方。
詳しくは後述します。

《潮の虚ろの漕ぎ手/Tidehollow Sculler》
疑似ハンデス内臓の熊。
小回りが利いて最悪十手を握る両手がある、という意味ではとてもDeadguy的な生物。
一方、Ancient Grudgeを前にJitteもろとも粉砕されたり、Chrome Moxに刻印出来なかったり、次の除去を引かれると連鎖爆発する"疑似"故のもろさがあったり。


他にも両十字軍や夜鷲等が候補に挙がりますが、良く見かける連中はこれぐらいでしょうか。



②手札破壊

《思考囲い/Thoughtseize》
最安定の選択肢でありながら、ライフロスが中々辛い。
というのも、単に赤相手の場合に限った話ではなく、こちらのボブや石鍛冶というカードはいずれもフル稼働までに若干のタイムラグが存在します。
そこを攻めてくる相手のアタックは通さざるを得ず、どうしても「ライフ10から頭蓋で反撃開始」という構図に陥りやすい節がある訳です。


《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》
割と優秀な若手。
上述の囲いのデメリットは解消されていますが、範囲が狭いのは難点です。
4マナと言えばジェイスですが、こいつはまぁ並み居るトークン連中でひき殺せるから良いとして、問題はSnT系の「実弾(Grisel/Emura」と《騙し討ち/Sneak Attack》を落とせないこと。
せっかくのハンデスなのにコンボ相手に効き目薄というのはあまり喜ばしいことではありません。


《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
上手く使えば暴力的な効果を発揮するがスカると何をしているのか分からないという意味で、好き嫌いの別れる候補。
安全確認を絵にかいたようなカードであり、爆発力のあるデッキにとっては非常に強力な妨害手段となるのですが…
ちなみにFB用の安い命が大量にあるというのはBWで使う理由の一つになります。


《Hymn to Tourach》
黒の伝統工芸・2マナランダムディスカード*2。
確実にアドバンテージを取りに行けるのは優秀です。
が、"BW Mystic"に於いては基本的に不必要だと考えます。
詳細は後述します。



③除去
《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
説明不要

《名誉回復/Vindicate》
好き嫌いの別れるカード。僕は言うまでもなく。
取り敢えず何が起きても大丈夫という安心感が取り柄と言われますが、僕が個人的にこのカードが大好きな理由はまた別の所にあります。
要はWasteland+Vindicateによる土地破壊戦略が取れるという事です。

BWの妨害手段というのは基本的に手札破壊一本調子であり、土地をずらずらと並べられて上からデカいスペルを叩き付けられると辛いものがあります。
加えて、相手のハンドを全て叩き落とすことなど中々できませんが、土地を攻めて「ほぼ全て不要牌」にすることなら割と可能です。

《忘却の輪/Oblivion Ring》
上記のような土地破壊は出来ませんが、全知型SnTが流行するようなら是非メインから採用したい妨害手段。
一方、RUGが再びStifleを搭載し始めるのであれば、好ましい選択肢ではなくなります。


④PW
《ヴェールのリリアナ》
登場後多くのDeadguyで採用されている小型PW。
特段デッキの動きに噛みあう事はありませんが、最序盤に築いた有利を固定するという大事な役割があります。

これを使うなら是非「引いて叩き付け」をさせない為のVindicateは欲しい所です。

《イニストラードの君主、ソリン》
エルズペス程ではありませんが他のPWに対して強い頼れる4マナ域です。
安い命たちを並べて紋章を貼るだけで終わるゲームもありますし、吸血鬼に守られながら奥義を目指す場合にはエルズペスよりも優秀です。
そして何より2BWという色拘束の少なさが、Bから出して行きたいDeadguyにはとても扱いやすいというメリットになっています。

《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》
強いですがWWが出づらく、また飛ばしてゲームが終わるようなサイズの生物もこのデッキには存在しません。
ソリンと危険負担を分担する以外の目的で使うつもりはありません。
未練ある魂対策のDread of NightやSulfur Elementalに弱いのもマイナス要素。
(ソリンのトークンは黒)



⑤その他
《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》
序盤にマナをタイトに使用するこのデッキでは、消耗戦に持ち込んだ場合以外あまり回している余裕がありません。
一方、消耗戦になると手札破壊スペルが基本的に不要牌になってしまうため、それらをライブラリに押しとどめるという重要な役割もあります。


《金属モックス/Chrome Mox》
よく存在が疑問視されるのがコイツ。
「なんで2枚しか?」「要らないんじゃ?」と直観的に語られる事が多いですが、このカードはあくまで「デッキ構築の算数」に用いる調整要素だと思っています。

「土地」と「T1アクション」で重複してカウントできるのがChrome Moxの意義なのです。

具体的に言うと
「石鍛冶からソリンまで骨子となる部分を詰め込んだら37枚になった。」
「現状1マナハンデスが6枚。でもT1のアクションは8枚欲しい。」
「2枚審問を追加すると土地は21枚。これは少ない。マナ要素は23枚必要」

この場合はChromeを2枚入れれば計算が合う訳です。
実際、僕自身「初動が7枚欲しい」と思い、Chromeを1枚差ししたことがあります。


《盲信的迫害/Zealous Persecution》
除去であり火力にもなる謎の1枚。
LilianaがNoble Hirarchを焼いて落とされる、という事がなくなります。



③じゃあ、どうやって組むの?

ここからが本題であり纏めです。

僕はまず構築に際してBobとSfMを手に取りました。

第1段階
・確実にConfidantを設置する為に、1マナの妨害は4枚じゃ足りない。
 6~8枚入れる事にしよう。それなら石鍛冶も安全に出せる。
・囲いを入れざるを得ず、またEE X=2のリスクを負いたくないので、ライフを犠牲にする2マナ置物=苦花の採用は見送ろう
・安い命担当はLingering Soulsに決定。


第2段階
・このデッキが苦手とするのは何か。→十手ソウルで落とせない緑の大物に殴られて攻めに転じられずジリ貧に陥ること。
・黒緑剣を採用するか、十手による小物掃討後に相手を押さえつけるVeilを採用するか。
・十手は対消滅のリスクが高いことからメインに2本取る必要がある。
逆に、相手の十手を消せなければまず勝ち目がない。
ならば、黒緑剣ではなく十手2、頭蓋1の構成にし、Lilianaを採用しよう。
・Lilianaを採用するメリットは大きい。打点の低さ故にコンボやコントロールにリカバリされる心配もなくなるし、Lingering Soulsとの多少のシナジーもある。


第3段階
・これで大枠方針は決まった。あとは穴を埋めるだけだ。
・対ハンド・対生物の戦略は上記のとおり。問題は厄介な置物だ。
・名誉回復を採用しない手は無い。土地破壊によりLilianaの効果時間を伸ばしてくれることも期待できる。

第3.5段階(実践後)
・やはり押しが弱くて抜けられる事もあるし、相手の面展開を前にLilianaがfogにしかならない場面も見受けられた。
・両者を補う《盲信的迫害/Zealous Persecution》を採用しよう。


こうして今の形が出来ました。
こういうルートで考えた場合、サリアはメインには入らないし、hymnも入らない。

何が言いたいかと言うと、「構築の選択肢は論理的に、有機的につながっているべきである」という事。

他人様のやり方にケチをつけられる程の立場ではありませんが、矢張り
「"〇〇を使ったらdazeされて負けたから抜いた"という酷く限定的な結果論」
「"強い""ヤバい"といった単なる感想」
「"アドが取れるから"といった"必要性"ではないただの事実」
という構築記を見ると、そっとブラウザを閉じてしまうのも事実です。


無論、自分の稚拙な考えが「論理的」と断言するのもおこがましいですが、少なくとも「自分はこう考えてこう組んだ」という説明があれば、同じようなデッキを使う人たちにとってもとても有益な記事になるのではないか、と思う次第です。

今回の日記も、こういう風に書いていれば例えば
「この理論はおかしい。
 十手なくして勝利はないという前提にそもそも瑕疵があり、
 Lingering Soulsを4枚採用して空からダメージレースを仕掛ける事が
 出来るのだから、十手は相手のモノを潰す為の1枚で十分である。
 代わりに対コンボ戦で妨害しつつクロックを増加させられるSoFaFに
 戻すべきだ」
というような反論が出てくるかもしれません。
これは僕にとってもとても有意義なことです。









とまぁかなり話が脱線しましたが、以上がBW Mystic構築の僕なりの考え方でした。
以前rainさんが「もっとみんなドヤ顔デッキ解説をしなさい」と言っていたのを思い出してたので、"All about 猫山zoo"以来久々に頑張ってみました。

コメント

VM
2012年9月24日0:54

とても読みやすく、また大変参考になる記事でした。
自分で試せていないカードの使用感やその選択理由を知ることができて有益でした。自分も無い頭捻ってまたBWのリストまとめてみたいと思います。

やこう
2012年9月24日2:08

大変ためになる記事でした
特に金属モックスのくだりは自分にはない発想で面白かったです
私は単に初動の遅さをカバーするために入れてました
3.5段階目で迷走しがちなのでこれを機に自分のデッキを見つめなおしてみたいと思います
>「"〇〇を使ったらdazeされて負けたから抜いた"という酷く限定的な結果論」
が多いですし

折角なので反論を
十手ソウルで落とせない大物に殴られ、攻めに転じられないのが苦手とありますし同意ですがこれを何とかするのが安い命達の役目だと思っています
その際に独楽を回したりでなんとか見つけた除去が名誉、リリアナだったりというパターンは多く、戦線の維持にマナの不要な苦花こそ安い命枠に適しているのです
また、その後の攻めに転じる際もリンリンだと生き残ったトークンが1,2体だと大した脅威にはなりませんが苦花なら勝手に増えるのでスムーズに攻めに転じられます
ライフロスは確かに痛いですが十手に何とかしてもらえます
あと私がEEをあまり見ないだけなのは否定できません

最後に、突然の衰微が増えたら私もリンリン使います
長々と申し訳ありませんでした

やおドラ
2012年9月24日2:14

うほ
コレは良い記事w

kenon
2012年9月24日9:53

頭の中のことを代弁してもらいありがとうございます。
9割方同じ見解です。
それを文章にできるのが凄い。

らぐ
らぐ
2012年9月24日14:04

はいすいませんまじめに書きます

りょーちん@Brion
2012年9月24日20:17

>VMさん
有難うございます。
BW系は構築が人それぞれなので、他人様のリストが楽しみです。

>やこうさん
実は追加の奴隷枠として苦花のfoilを買おうとしていました。
Abrupt Decayは痛いですが、それによってボブが、石鍛冶が、十手が生き残るのなら構わないという気もします。
ScMからのFBだけは許してはいけないので、Wastelandをきっちり引けるかどうかがキーになりそうですね。

>やおさん
とかいいつつ解体しようとしてるんですけどねw
久々にnaya使いましょかね。。。

>kenonさん
言葉にすると自分の頭の中の非合理的な考えを追い出すことが出来るので、自分の為にやった感はあります。
残り1割が気になりますw

>らぐさん
オラ!オラ!チンポ!チンポ!セイヤッ!セイヤッ!

dome
2012年9月24日21:45

海外輸入より安い命のスクラブ買ったので今度BW組みますわ。

ただ、ダリチューからヒム、シンク、ヒッピーをぶっぱなす
(今ならリリアナ)BWデッキにこそが
デッドガイエール、ピキュラ黒だと思ってます。

りょーちん@Brion
2012年9月24日22:25

ピキュラ黒の真打・ダリグロ魔王ことナン影も忘れないで。

BB系テンコ盛り=ピキュラ黒を名乗る資格。
そう思って↑ではP-Blackに言及しなかった。

dome
2012年9月24日22:49

ソープロされないパンプナイツの方が強い。

りょーちん@Brion
2012年9月24日22:59

急に思い出から現実に引き戻される悲しさ。

らぐ
らぐ
2012年9月25日20:05

僕に対する扱いだけひどくないですか?

りょーちん@Brion
2012年9月25日20:15

イホホ
トモモ
へサは

mtgalter.diarynote.jp/201209251950243203/

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