最近ちょくちょく見かける"両面ジェイス"。
無論スタンダードで「盤面制圧可能な2マナルーター」が強力であることは疑う余地もないが、ここで言うのはモダンやレガシー、更にはヴィンテージといったいわゆる「下環境」での話だ。
モダンではありとあらゆる方向から《稲妻/Lightning Bolt》が飛んでくる上にFBするスペルが左程強力ではないため立ち位置が微妙だが、ヴィンテージにおいては全くその逆であるが故に新たな可能性を示したことになる。
《搭載歩行機械/Hangarback Walker》が新たなWorkshopの住人として迎え入れられたこともあって、"マジック・オリジン"は大波乱を呼び込んだと言えよう。
さて、その間に置かれてレガシー。
これもやはり恐る恐る使われ始めているのを見かける。
Deathbladeで、BUG Delverで、Jeskai Stonebladeで…
まだまだ用途も枚数も限定的ではあるものの、一部のプレイヤーにとって「十分にプレイアブル」と判断されたことは興味深い。
ここでは、一度素直な心でこの超・《マーフォークの物あさり/Merfolk Looter》を見直してみることにしよう。
ヴリンの神童、ジェイス 1U 伝説のクリーチャー-ウィザード
(T):カードを1枚引き、1枚捨てる。墓地が5枚以上なら追放し、裏返しで場に出る。
0/2
際限なきテレパス、ジェイス (5)
+1:最大1体までのクリーチャーを対象とし、次自ターンまで-2/-0
-3:墓地にあるインスタントorソーサリーを1枚EOTまでプレイ可能に。
-9:呪文を唱える度にライブラリを5枚削る紋章
①生物としての性能
青い2マナの0/2。
・おそらく環境に存在する全ての軽量除去1枚で処理される。
・1/1や1/2を止めることが出来る。
・十手を装備する為のクリーチャーカウントには向かない。
・タフネス1用除去では落ちない。具体的には《ゴルガリの魔除け/Golgari Charm》や《仕組まれた疫病/Engineered Plague》、《電謀/Electrickery》。
②変身条件等
・墓地5枚は非常に敷居が低い。レガシーは墓地を6枚、2度3度追放することに慣れている。
・能力起動から変身までの間に介入の余地は無い。
・一度追放されるので別オブジェクト扱い。相手の攻撃を1度だけ、1体だけとはいえ疑似《濃霧/Fog》出来る。
③PW性能
・+は単純に「溜め」で終わる相手も多いが、自身の忠誠度上昇も加えてパワー3を無力化出来ることになっている。
・-は連発不可能ながら、BrainstormやPonder等対象には困らない。
・-についてはFBとは微妙に挙動が異なる。代替コストを支払えるのがその最たるもの。
・大-は殆ど忘れていい。
ここまでは機械的に書いてることを読み返しただけなので、もう少しレガシー環境に照らして考えてみよう。
・先置き2マナでタイムラグはあるが、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》と違い1度に必要とするマナが少ない。相手の《目くらまし/Daze》や《呪文貫き/Spell Pierce》を掻い潜り易いことは明確なメリットだ。
・ほぼノンクリーチャーデッキで運用するのは難しい。相手が手札に腐らせている除去を有効活用されてしまうだけであり、かつ除去を持たないような相手は(具体的に想像しうる範囲では)ほぼジェイスを無視してこちらを沈めることが可能だ。
・奥義は正直に言うとまだ評価が悩ましい。《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》に比べて自衛能力がないため、メインにREBが許容される環境であるならばさっさと適当なキャントリップなりを使い回して忠誠度を消化して行った方がマシに思える。
・変身したくない場合、つまりルーターとして長く運用したい場合は、探査スペルや《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》で自分の墓地を抑えておけば良い。コンボ・デッキが相手の場合は往々にして自身も不要牌になるが、更なる不要牌である《剣を鍬に/Swords to Plowshares》等を捨ててい行く事が出来るのは結構悪くない。
そんなところで、レガシーにおける主要な青いデッキでの運用を考えてみよう。
① Miracles ×
上述の通り、相手の除去を有効活用させてしまうだけだ。使わない方が良い。
② Uxx Delvers △
これ自信が受けに回るカードであり、Delver Deckの目指すスピード・ゲームに合致しない。Dazeのような賞味期限の短いカードを入れ替えていくことは出来るが、本来はその期限が来る前にゲームを終わらせるべきであり、助長過ぎる保険と言えよう。
③ Stoneblade 〇
他にもプレッシャーをかけられる生物がおり、これを処理すればそちらが生き残るというジレンマに陥らせることが出来る。
重い一撃を持たないデッキなので、裏面で細かくアドバンテージを取れるのも有り難い。
④ Pyromancer Control 〇
こちらもStonebladeと同じく、避雷針としての役割を期待できる。
ロングゲームを目指す割に賞味期限の短いカードも多いので、更に一回り小さい《ダク・フェイデン》のような使用感になるだろう。
⑤ Cascade 〇
Shardless Agentから捲れるPWというのは悪くない。
HymnやAbrupt Decayのような、手札にあまりがちなカードを処理してくれるのも嬉しいところ。
⑥ Reanimator 〇
言うまでもなくルーティング能力が噛みあう。
更に、後半使い辛い《再活性/Reanimate》で軽く自信を吊り上げることも出来る。
とは言え、やはり早期決着になんら寄与してくれないのは難点ではあるが、ミッドレンジ・シフトするなら検討の余地は大いにある。
入り得るデッキはこんなところだろうか?
その他、今や見る影もないが、かつてルーターが採用されたデッキと言えば、Madnessが挙げられる。
既存のデッキへの影響だけでなく、失われた、または新たなアーキタイプを生み出す原動力になってくれればまた一つレガシーが面白くなるだろう。
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